――初めてお目にかかったとき、納骨堂のシステムの開発者が、そこのお寺のご住職だと聞いて、とても驚きました。
住職:
確かに多くの方に「お寺とIT…?」とよく言われます。
でも最初は、檀家さんの住所やお布施の管理とか、
他のお寺では手帳でスケジュールの管理しているような内容をパソコンで行っていた程度でした。
そのうちに、1万以上の檀家さんがある大きなお寺さんから「うちもパソコン管理をしたいから、面倒を見てくれませんか?」と言われて、それをきっかけに”お寺”と”開発”の関係がスタートしました。
そもそも自分のお寺でデータベース管理をしていましたから、知識の蓄積はありましたので、エンジニアを雇って開発も行うようになりました。
――そのエンジニアが吉田さんだったのですか?
住職:
いえ。そのエンジニアは途中で転職してしまいました。
それが、お寺に檀家さんなどの管理システムをどんどん導入した後のことだったので、
「今後、どうやってこのシステムを保守していけばいいのだろう」
と困っていたところに、吉田さんとの出会いがあったのです。
――当時から、吉田さんはバリバリのエンジニアでいらしたんですね?
吉田:
いいえ、ご住職に「うちのシステムの保守をしてくれる人、誰かいませんか?」と言われたのがきっかけですね。
正確に言うと、昔からパソコンには触っていたけれど片手間という感じでした。
アクセスやファイルメーカーを触るとか、Excelでマクロを組むとかそのくらい。
ユーザーレベルですね。
だから、本格的に開発――コマンドやソースといった言葉に触れる機会を与えてくれたのはご住職なんです。
住職:
吉田さんは、いずれこの世界(開発)に入るはずだったのかもしないけれど、
私から声をかけたことがきっかけになって、方向性も大きく変わったと思います。
吉田:
ちょうどその頃、全国に支店を持つ料理教室から、
「うちの管理システムが2000年問題で使えなくなる」と相談を受けたのです。
ご住職から依頼があったのとちょうど同時期ですよ。
だから、同時に2つのことに取り組まないといけなくなりまして、つまりシステム開発の一歩を踏み出さないといけない状況を周りがつくってくれたのです。
住職:
私も吉田さんも、誰から習ったのではなく、必要に迫られて覚えた結果です。
その点、学校で勉強して就職し、仕事として開発しているという人のつくり方とはちょっと違うかな。
吉田:
ご住職からお声がけいただいたときは、
「しばらくメンテナンスすることはないから、保守だけしておいてください」と言われたんです。
が…なんと、2ヶ月後にいきなり改変。
まだソースや構成が読み切れないレベルにいるの改変ですよ。
――それで、どうされたのですか?
吉田:
「できますか?」って訊かれて、「やらなアカンでしょ」って(笑)。
―続く―